税理士を探そうと思っても、税理士と接したことのない方々にとったら税理士の違いがわからないと思います。
税理士事務所のタイプによって、どのような違いがあり、どのような方がどのタイプの税理士に合うのか、その判断のお役に立てればと思いまとめてみました。
縦軸=事務所規模(1人税理士や数人規模か、税理士法人等の組織か)
横軸=メインとする業務の属性(作業型か、提案型か)
1-1. 個人&作業請負型(個人商店)
従来型の税理士事務所で、個人商店に近いタイプです。
仕事内容は、記帳代行・年末調整・確定申告や税務関係書類の作成といった作業的要素の多い業務がメインで付加価値は低めです。
事務所の規模は、所長先生1名とスタッフが1~2名くらい。
所長の年齢は比較的高く、古くからある業歴の長い顧客を抱えている場合が多いです。
ITなどの新しい技術にはあまり興味がなく、従来からのやり方を続けていることもあります。
顧客メリット
- 長い付き合いであれば気を使わなくても安心して任せられる
- 人同士の付き合いができるため多少の融通は聞いてくれる
顧客デメリット
- 料金体系がざっくりしていて昔からの高い価格水準を維持している場合がある
- サービスの質が所長税理士の力量に左右される
向いている顧客
- 長い付き合いがあって、既存事業のまま現状維持を望んでいる個人や法人に向いています。
- 経理関係の記帳作業やチェックだけ任せたい場合や申告を無難にやってもらえれば良いという個人や法人にも向いています。
1-2. 税務署OB型
税務署に23年以上勤めた国税従事者は、研修のみで税理士の登録が出来る制度があり、税理士試験免除で税理士登録ができます。
税務署で従事していた業務に関する知識、スキルはとても高いです。
ただし、部署間での異動は少なく、専門外の税務に関する知識、スキルは低いことがあります。
顧客メリット
- 税務調査では手の内を知り尽くしているので納税者の強い味方
顧客デメリット
- 役所勤務が長いため、顧客先との接し方に難がある人がいる
向いている顧客
- 税務調査の時の対応を重視したい個人や法人に向いてます。
2. 組織&作業請負型(大型スーパー)
近年、ITの発展とともに伸びてきた形態で、大型スーパーのような存在です。
仕事内容は、これまで個人事務所が扱ってきた記帳代行などの作業的業務をメインに据えており付加価値は低めです。
税理士ではない給料の安いスタッフを大量に採用することで、組織化・標準化のスケールメリットを活かすことができ、
既存の会計事務所ではありえないほどの低価格でのサービス提供を実現しています。
またインターネットを活用して、全国から記帳代行業務を請け負っていたりします。
顧客メリット
- 価格が安い(月額数千円~)
顧客デメリット
- 定型的業務が中心で、通常以外の業務に対応してくれないことがある
- 直接対応してくれるのは税理士ではないスタッフが多い
- 有益な助言や提案などはあまり期待できない
向いている顧客
- 最低限のサービス対応で構わないので、とにかく税理士費用を安くしたい個人や法人に向いています。
3. 個人&ソリューション提供型(セレクトショップ)←当事務所は今ココ
記帳代行、年末調整といった定型的・作業的な業務は当然のように行い、むしろ経営者のアドバイザー的な立ち位置で顧客に関与する形態です。セレクトショップに近い存在です。近年の若い税理士が開業する場合、こちらの形態からスタートすることが多いです。
何故なら、作業の請負業務自体には価値が少なくなってきていることに気付いているからです。
また、クラウド会計など最新のツールを使いこなしていることが多いのも特徴です。
手掛ける業務は、経営分析、資金繰り・資金調達のサポート、経営戦略・事業計画の立案、各種シュミレーションなど多岐にわたります。
規模はあまり大きくないが、記帳や税務申告書の作成以外にも提案やアドバイス・相談のしやすさなどの付加価値を重視しています。
顧客メリット
- 大手事務所出身者も多くサービスのレベルが高い
- 自分のニーズと合致していれば、心強い味方になってくれる
顧客デメリット
- サービスの質が税理士の力量に大きく左右される
- 税理士の関与度合いが高いため、格安の事務所に比べて料金が高い
向いている顧客
- 目的が明確であったり、事業を大きくしたいと考えている個人や法人に向いています。
4-1. 組織−ソリューション提供型(百貨店)←当事務所はココに移行予定
大規模組織でソリューション提供型の業務を手がけている形態で、税務顧問が中心ですが、特殊税務も部分的に受けています。広く様々な税務リスクへの対応が可能な税理士事務所・税理士法人であり、百貨店のような存在です。
知識、スキルは税理士により異なりますが、総じて高いことが多く、その分料金も個人商店タイプよりはやや高めに設定されていることが多いです。
広く浅くではありますが、横断的な対応が可能なため毎月の記帳業務や経営の相談に加え、個別の税務相談にも乗ってくれるところが多いです。
持ち前の情報力・組織力で、事業承継や相続対策などを切り口に、富裕層の顧客に対しアプローチをかけています。
組織力と高スペックの社員・職員、そして優良な顧客層が武器です。
付加価値が高く、規模が大きい事務所であり、色んな種類のサービスを提供しており、各サービスの質も一般的に高レベルです。
顧客メリット
- あらゆる業種のさまざまな課題に対応できるよう、サービスラインが充実している
- 税理士をはじめとした人材が豊富である
- ネームバリューがある
顧客デメリット
- 料金が高い
- 担当者によってサービスの質の差が非常に大きい
- 担当者の入れ替わりが激しい
向いている顧客
- いわゆる大企業や売上10億円以上あるような中堅企業といわれる法人に向いています。
4-2. 専門型(ショッピングモールの中の専門店街)
医業や歯科、飲食店などの業種に特化したり、相続や国際税務、買収合併など組織再編(M&Aなど)の業務に特化した税理士法人であり、ショッピングモールの中の専門店街のような存在です。
他にも不動産投資信託(REIT)、不動産の証券化(SPC)、株式上場支援(IPO)、内部統制(J-SOX)などに特化した事務所もあります。
専門以外の業務は請け負わないことが多く、長い付き合いを考えている場合は、お付き合いのある税理士から専門の税理士を紹介されるのが一番良いでしょう。
顧客メリット
- 専門知識やスキルが高い
顧客デメリット
- 料金が高い
向いている顧客
- 単発の難しい案件を相談するケースに向いています。
4-3. 大手監査法人型(高級ブランド店)
世界の主要な上場企業、またはグロ-バル展開をする非上場企業を顧客とし、会計・監査・税務・コンサルティングといったプロフェッショナルサービスを提供している税理士法人です。高級ブランド店のような存在。
4大税理士法人(BIG4)といい、
- Deloitte Touche Tohmatsu(DTT)
- Ernst & Young(E&Y)
- KPMG
- PricewaterhouseCoopers(PwC)
の国際4大会計事務所のメンバーファームです。
国際税務、買収合併など組織再編(M&Aなど)の高度な専門知識を備えたエキスパート集団です。
知識、スキルは高い方が多く、様々な出来事に対応できますが、大規模事業者向けの業務分担・料金設定となっているため、小規模の事業者の懐には優しくないことが多いでしょう。また、縦割り組織の為、横断的な対応は意外と難しいところも有ります。
あらゆる税務リスクに対応するために普段から力を入れる場合は必要ですが、個人事業主や、小規模な事業展開の方には手厚すぎるのであまりお勧めしていません。
顧客メリット
- 専門知識やスキルが非常に高い
顧客デメリット
- 料金が高い
向いている顧客
- 上場企業やグロ-バル展開をする非上場企業が向いています。