大阪の公認会計士・税理士KOIBUCHIです!
今日は、起業を経験した経営者なら誰もが知りたい「リーダーシップ」と「巻き込み力」のお話。
TEDの動画を見て非常に為になったので、要点をまとめてみました。
ぜひ会社の経営者だけでなく、管理職や営業マンやマーケティングに携わる方は、この動画も直接見ていただきたい。(動画はこの記事の最下部で再生できます)
1.ゴールデンサークル理論とは 〜リーダーシップと巻き込み力〜
私のゴールデンサークル理論との出会いはTEDの動画だった。
TEDというのは、Technology・Entertainment・Design をテーマにした短時間のプレゼンテーションで、世界中の叡智が結集した講演である。私は、マーケティングコンサルタントのSimon Sinek氏のプレゼンを聞いて、ゴールデンサークル理論を知った。
ゴールデンサークル理論は、「why・how・whatの3つの円で構成されていて、物事の本質を説明するためのフレーム」である。
結論から申し上げると、
「人は、何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かさせる」
これがゴールデンサークル理論の全てだ。
why・how・whatについて説明する。
ゴールデンサークルは、内側のwhyを中心に、how、whatと外側に円を描く、3つの円である。
円の中心から、why(なぜ)→how(どうやって)→what(何を)の順番で想いを伝えることで、共感を生み出すことができる。
「why」・・・なぜそうするのか(信念、目的、何のためするのか) 「how 」・・・どうやるのか(商品やサービスの説明、方法、理論) 「what」・・・何をするのか(商品、サービス)
2.whyから始めよう
なぜAppleやキング牧師やライト兄弟が成功したのか、この動画ではその共通点が紹介されているのだが、ここではAppleのパソコンを例に説明する。
ケース① 普通の会社がパソコンを売る場合
円の外側から説明を始める。
つまり、what→how→whyという順番だ。
what:「我々は素晴らしいコンピュータを作った」 how:「美しいデザインで簡単に使え、親しみやすい製品です。」 why:「一ついかがですか?」
・・・誰が買うねん。という話だ。
何をして、どう違い、どう優れているかを述べ、相手に何か行動を期待する。
このように、何を(what)から入ると、ちょうどコンピュータを買いたいと思っている人以外は興味を惹きつけることはできないだろう。
しかし、Appleは違う。
ケース② Apple がパソコンを売る場合
円の内側から説明を始める。
つまり、why→how→whatという順番だ。
why:「我々のすることは全て、世界を変えるという信念で行っています。異なる考え方に価値があると信じています」 how:「私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使え、親しみやすい製品です」 what:「こうして素晴らしいコンピュータが出来上がりました。一ついかがですか?」
・・・買います。
何故かコンピュータを買いたいと思ってなくても、何かに期待してしまい、話を最後まで聞くほどに興味を持ってしまう。
why→how→whatという順番で円の内側から話をするだけで全く違うように感じてしまう。
「人は、何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かさせる」のだ!
whyは人を惹きつける。
人を惹きつける人間力については、『人間力の正体「鬼と金棒」と「非認知能力」』をご覧ください。
3. 人間の行動と脳の仕組みの関係性
生物学的に、「脳のwhyを司る部分に働きかけることが重要だと証明されている」とサイモン氏は言う。
人間の脳の外側に、「大脳新皮質」と呼ばれる部分があります。
大脳新皮質は知性を司る部分で、わかりやすく言うと、言語の理解や論理的な思考ができるところ。
先程のパソコンの例で言うと、機能やデザインが優れていることや、費用対効果の計算などは脳のこの部分がすると思っていい。
つまり、その製品の何が良いのかメリットやデメリットの比較ができるのだ。「what」の部分である。
ただし、人間はそれだけで意思決定をするわけではない。
その製品の素晴らしさは、頭ではわかっているのだがなんとなく好きになれなくて、買いたいという気持ちになれない、といった経験をしたことがある人は多いだろう。
人間は頭ではなく、心で意思決定するのだ。
人間の脳の内側には、「大脳辺縁系」と呼ばれる、感性などの本能を司る部分があります。
わかりやすく言うと、感情に大きく関わる部分で直感的な意思決定をするところ。
先程のパソコンの例で言うと、Appleの信念にワクワクし、将来に期待でき、その製品を手に取りたくなるのだ。
これは「why」の部分である。
同じ製品を買うにしても、無愛想な店員に対応されたら買う気を無くしたり、親切な店員に対応してもらえたらこの人から買おうと思ったことはないだろうか。
人間は、メリットやデメリットだけではなく、最終的には直感であったり、感情が大きく動いた時に行動をする生き物なのだろう。
ここで説明してきた、人間の脳の外側と内側の話は、whatとwhyであり、脳の構造がゴールデンサークルの形を一致しているのが面白い。
最初に「why」 から伝えることで、大脳辺縁系が司る人間の感性や感情の部分にアプローチでき、行動の意思決定を促すことができるのだ。
4.部下や後輩に説明するときにも意識する 〜人材育成〜
このゴールデンサークル理論は、経営者などのリーダーにはもちろんだが、経営者以外の人も知っておくべきだ。
経営者に限らず、部下を持つ責任者は互いに協調し合いながら、人を動かすスキルが求められる。
部下に指示や説明をしたものの、理解して行動してくれない、それゆえに怒ってしまい、微妙な関係になった人も周りにはいるのではないだろうか。
伝え方が下手な人は、ほとんど用件だけを伝える。
用件だけを伝えるやり取りはwhatだけで終わるので、時間は短く済むし合理的に感じるが、その意図がわからないのでしばしば認識にズレが生じる。
ケースA ダメ上司
what:「この書類の数字をまとめ上げて、提案書を作ってくれ」 how:「図とかグラフとか使った提案書でよろしく」
と言われて作ったら、どんな提案書が出来上がるか。
どんな目的を持って何をどのように伝えるための報告書なのかを教えてもらえなかったので、無駄な提案書を作ってしまったというのがオチだろう。
また、最終的にどんな提案書を想像しているのかを教えてもらうために作業を中断して何度も相談しに行ったということがあれば、かえって時間がかかり効率が悪い。
ケースB 育て方が上手い上司
why:「今回の提案はお客様にとっても、うちの会社にとっても新しい挑戦となる」 how:「現状はライバル社が提示した数字的根拠が乏しいので、うちはもっと説得力を意識して数字をまとめ上げて欲しい」 what:「図やグラフを活用して視覚的に見やすい提案書を作ってくれるかな?」
この上司の伝え方は素晴らしい。
このような指示をもらった部下の心には炎が灯り、自ら進んで勉強して、不器用だけど素晴らしい提案書を作り上げるだろう。
繰り返すようだが、「人は、何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かさせる」のだ!
5.自己紹介でもゴールデンサークルを意識する
ゴールデンサークルは様々なケースに応用できる。
初めて会った人への自己紹介や自分の会社の説明をするときにも使えるのだ。
【質問】どんな会社をされていますか?
という問いに対してどんな回答ができるか。
【回答1】私は、税理士事務所をやっています。主に顧問税理士としてお客様の相談に乗ったり、税務申告書の作成をしています。よかったら今度詳細にお話しましょうか?
こんな回答はどうだろうか。
明らかにwhatからの説明であり、whatしか説明してない。
【回答2】私は、経営者の夢の実現を支援する仕事をしています。経営者のように自分の夢に挑戦する人が世の中に増えれば、前向きで明るく失敗してもいい何度でも挑戦できる社会が生まれると信じています。そのために、「先生」ではなく、経営者の「パートナー」として、税金だけでなく、ヒトモノカネの経営に関する全ての課題に対し解決できるよう支援させていただいています。私1人ではなく、同じ想いを持った仲間が集まった、そんな税理士事務所です。
こちらの方がわかりやすいのではないでしょうか。
大袈裟に書いたわけではありません。全部本気の伝えたい想いです。
いかがでしたでしょうか。
興味がある方は勉強になるので、下記の動画を見ていただくとより身に染み入るだろう。
【Simon Sinekの「優れたリーダーはどうやって行動を促すか(How great leaders inspire action)】
我々も、何を信じているのか、何を意図して伝えようとしているのか相手にわかるよう心掛けていきたい。
優れたリーダーは優れたデザイナーでもある。
デザインに興味のある方は『経営者の意思決定力と創造力とアートの意外な関係 〜理解編〜』もご覧いただきたい。
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